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園長の日記

赤の他人が必要な他者となるように

2022/08/11

私たちは子どもを「人との関わり」という視点で捉えることを大切にしています。人との関わりの関係の質が、その子の持って生まれた特性がうまく発揮できるようになったり、あるいは体験によって身につけていくさまざまな知識やスキルの獲得などにも影響します。今週は火曜日、水曜日と二日続けて入園前の見学案内を合わせて4家庭の方にしたのですが、子どもたちは見学にきた「お客さん」との出会いも楽しそうなのです。

しかも乳児と幼児では「人との関わり」にはっきりと違いが見られます。乳児は見学者が帰るときに「バイバイ」と手を振ってくれます。出会いの場面では、私と見学者の顔を交互に見比べて、「この人、誰だろう?」という顔をしています。近すぎるとドキドキさせてしまうので、こどもたちをあまり見つめないようにしながら。(最近はそれもあまり気にする必要がなくなってきた気がします、知らない人が来てもあまり不安な表情は見せなくなってきました。これも関係の育ち、の一つですね)

この乳児の人との距離感に比べて、幼児になってくると、「わあ、赤ちゃん可愛いい!」と頭を撫でてあげようとする子どもたちがいます。人懐っこい子どもの特性が見られます。(コロナ感染症の対策をしているので、見学者の赤ちゃんには触れないようにするのですが、)子どもたちの赤ちゃんへの関心の高さ、優しい気持ちを表す姿をみると、こんな体験も日常生活の中に、もっと自然に、たくさん必要だと感じます。そんな関わりが見学者の方も嬉しいようです。皆さんは、どうだったでしょう? 園生活が始まってしまうと、それも当たり前のようになっているかもしれませんが。

今日は模様替えをして、観葉植物が欲しくなったので、いくつか購入しました。室内に緑があると人間は気持ちがなぜか落ち着きます。今日主任が言っていました。「昔からやっていた自然なことや、人が美しいと思えることには、きっと意味があって、それを説明できなくてもいいから、やっていきたい」と。詳しい解説は学者や研究者に任せましょう。私たちは生活者。直感を大切にして、自分を信じて、子どもを信じて、赤の他人が必要な他者に変わっていく生活を作り出していきましょう。

 

 

 

赤ちゃんの驚くべき能力とは

2022/08/10

新しい環境になって、「どんな風に過ごしているのかなあ」と1階の乳児たち(0歳児と1歳児のクラス)の様子を見ていたら、運動スペースや絵本、ままごとなどで遊んでいた子どもたちが集まってきます。部屋の模様替えによって、調乳室の前のエリアからベランダ側へ移動した「食事スペース」で、朝のお集まりが始まろうとしていました。

先生が「何歌おうかなあ」とポロロロ〜ンとウクレレの音が響き、子どもたちの気持ちも、集まってきました。その時の一場面がこの写真です。先生の仕草を真似しています。手も体も体も、そして見えないけれども心も、子どもたちの姿がここに映し出されています。ここでちょっと一緒に考えてみてください。この子どもたちの姿から、何を思いつきますか? そして「なぜ」そのような姿になるのか、何か理由を説明できますか?

 

さて、そこでちょっとこの穴埋め問題の文章を考えてみてください。これはある大学で私が作った試験問題の文章です。みなさんだったら、この空欄にどんな言葉を入れますか?授業は保育内容演習「言葉」です。

「なにもできないように見える赤ちゃんは(  1  )のために準備されたと考えられる驚くほどの能力をもって生まれてきます。その中でもとりわけ重視したいのは(  2  )です。これらの能力は、親への愛情の形成やことばの獲得の基盤になります」

用意された選択肢から、ふさわしい語彙を選んでもらうのですが、1の正解は「人との関わり」で、2の正解は「人に対する関心」です。学生たちは全員合格でした。試験問題の文章は教科書の文章の要約なのですが、このことは、保育を始めるにあたって、あるいは教育を考えるにあたって、とても重要な人間の特性を語っているのです。でも、どうでしょうか、なんだか当たり前すぎて、気づきにくいことかもしれません。

でも、よくよく考えてみると、このことは当たり前でもなんでもなくて、不思議なことで、実に「驚くべきこと」だと思いませんか?人間は「人との関わり」なしに生きていくことはできず、その前提となっているのは「人に対する関心」が強いということなんだということ。あくまでも人と関わることが、その子らしさの基本の「ど真ん中」に「ど〜ん」と根付いているものであって、そこを大事にしていかないと、もったいない、ということです。

このことは、この写真の場面に限らず、いろんなところで感じられることです。お友達のやっていること、先生のやっていること、大好きなお家の人がやっていること、そういうことが気になって、僕も私も・・・おんなじようにしたい、なりたい・・・。そんな様子が、クラスブログには微笑ましく、幾つも点描されていますね。それが、とってしまったり押してしまったりにもなってしまうのかもしれません。

この写真の朝のお集まりの場面にしても、集まれている、先生の方を向いている、まとまっている・・・という評価がされがちなのですが、それは二の次、三の次。もっと大事なものが、ちゃんと前提として大切にされているかどうか、そこに保育のプロセスの質が脈打っているのです。

遊びの姿から聞こえてくる内臓の声

2022/08/09

「なんだか体の調子が悪いな」と感じるとき、私たちは休養します。からだを休めて、養います。それはまるで、自分で良くなっていくことを見守っているようなものです。「あれ?おかしいな」という、そのサインはどこから来ていることが多いかというと、ほとんどが<臓器>からです。その「あれ?」という、そのサインが全て判読できれはいいのですが、それがなかなか難しい。サインの判読は、脳でやるわけですが、そのサインが脳にまで届かないことがあります。

からだの変調は、いろんな形であらわれるとわかってはいても、そのメッセージが自分では、なかなか意識化されない。無意識の方までは届いていても、ぼんやりとしか意識できない。とくに新しい脳、意識を司どる大脳皮質にまで、そのサインが届くかというと、そうでもないことが多いから、ことは厄介なんでしょう。三木成夫(みき・しげお)さんの名著『内蔵とこころ』を読んで、こんな考えをもつようになりました。

熱が出たり、発疹が現れたり、いつもと違って元気がなかったり、便の状態が良くなかったり、からだのことを身体が表してくれると、まだサインは読みやすいのです。医学の知見を生かすことができます。何かの病気ではないかという診断と治療へとつなぐことができるからです。しかし、ソワソワしている、寝つきが悪い、なんとなくだらりとしている、イライラしがち、ベタベタとくっついてくる・・・など、いつもとは違うけど、まあ時々あるかな?ぐらいでは、病気かもとは思えません。でも何かちょっと心配・・こんなことって、よくあることですね。

そこで大事なのは、そのメッセージに耳を傾けること、あるいは経験から「きっとこうじゃないか」と推測して、効果があると言われていることをやってみること。そんな試みが保育の中には含まれます。子どもたちが求めていることを言葉で言ってもらっても、そこは言葉になりません。でも、新しいレイアウトになった室内環境で、遊んでいる子どもの様子を見ていると、あることに気づきました。

遊びに熱中していることは、何かをそこで使い込んでいます。ある力を発揮しています。その力が引き出されるのは、ものや人との関係の中で引き出されてくることが多くて、それが「臓器」の声になっているかもしれないということです。今日もあったのですが、例えば全身運動をしたいという「上腕筋」の声は、見学者に「やってあげようか」とネット上りを見せたがる子どもの姿となって現れたり、お友達が作ったのを見て甘い美味しいものを欲した女の子の「胃」は、折り紙でいちごミクルシェーキを作りたいと言って、折り紙をカップのふちの丸に合わせることを求めてきたのかもしれません。ちょっと、アクロバティックなつながりの見立てかもしれませんが、案外、私たちの行動を裏で密かに動かしているものは内蔵なんじゃないか、という発想が私の妄想を活性化させているのです。

このことが、もっとよくわかるのは、今日のわらすのブログ「心と身体」で紹介されている、身体感覚が求める色遊びや感触遊びでしょう。その遊びへの新鮮さや熱中の中に、担任は子どもの接触感覚の強い欲求を読み取っているようです。感覚が求めているものは、内臓の声を代弁している気がしてきます。子どもは、大人よりも、自分の臓器が発しているサインをダイレクトに体全体で表しているんじゃないか、そんなことを感じた1日でした。

乳児の部屋の模様替え

2022/08/08

「わあ、迷路みたいだ、ほら、楽しそうだよ」。

こんな親子の会話が聞こえてきた今日8日の月曜日の朝。1階のちっち(0歳児クラス)ぐんぐん(1歳児クラス)の部屋のレイアウトが大きく変わり、今日久しぶりに登園した子たちは、ちょっとびっくりした様子でした。先生たちも「どうかなあ、楽しく過ごせるかなあ」と、子どもたちの様子をよく見て過ごしました。3階のわいらんすい(3〜5歳児クラス)の部屋は、7月中旬に一足早く、ゾーンを大きく変更しました。今回、乳児の方も開園以来のゾーン配置から大幅にエリアの配置換えをしたのには、いろんな理由がありました。

最大の理由は、運動活動エリアの拡充です。室内で体を動かす場所を最初からもう少し増やしたい、という目的が一つ。それから絵本やままごと、くつろぎなど遊びや活動のゾーンの種類を増やしたいということもあります。さらに入り口から子どもの受け渡しの動線をシンプルにしたいという理由もありました。やってみて、かなりいい線いっている、というのが、この1週間の手応えです。

一般に環境を整えるときの視点は、子どもにあった過ごし方ができるようにすることです。これは発達にあった環境への再構成、と言ってもいいでしょう。子どもは刻々と成長し、変化します。それによって環境も変えないと発達に合わなくなります。それはまるで体は大きくなったのに、小さな服を着続けるようなことになってしまいます。これまでのレイアウトが発達に合っていなかったということではなく、コロナ禍に代表されるように気候や自然環境が変化し、これまで以上に戸外に出にくい日が増えるかもしれず、また少しでも室内で体を動かすことがしやすいように、ということが求められるようになってきたからです。

 

私たち大人は行動していると言えるのか?

2022/08/07

小学6年生の二人が、一生懸命、長い時間をかけて考えて紡ぎ出した言葉に、私たちは学ぶことができます。

「自分が優位に立ち、自分の考えを押し通すこと。それは強さとは言えません。本当の強さとは違いを認め、相手を受け入れること。思いやりの心を持ち、相手を理解しようとすることです。本当の強さを持てば、戦争は起こらないはずです。・・・今度は私たちの番です。被爆者の声を聞き、思いを想像すること。その思いをたくさんの人に伝えること。そして自分も周りの人も大切にし、お互いに助け合うこと。世界中の人の目に、平和な景色が映し出される未来を創るため、私たちは行動していくことを誓います」

昨日6日の広島平和記念式典から。

危険な核抑止論の罠

2022/08/06

8月6日の広島平和式典で、湯崎英彦広島県知事は次のように述べました。全く同感です。現実を直視することは、核抑止論に依拠しない知恵と行動を求めました。その部分を引用します。

「・・しかしながら、力には力でしか対抗するしかないとする現実主義者は、なぜか核兵器について肝心なところは、『指導者は合理的は判断のもと使わないだろう』というフィクションたる抑止論に依拠しています。本当は『核兵器が存在する限り、人類を滅亡させる指導者が出てきかねない』という現実を直視すべきです。今後再度、人間のこの逃れなれない性に根ざす行動を取ろうとするとき、人類全体、さらには地球全体を破滅へと追いやる手段を手放しておくことこそが、現実を直視した上で求められる知恵と行動ではないでしょうか。」

幼児の部屋の模様替え

2022/08/05

3階には3歳児クラスのわいわい組、4歳児クラスのらんらん組、そして最年長5歳児クラスのすいすい組の子どもたちが生活しています。このクラスの子どもたちは、同じ場所、同じ生活空間を共有して、一緒に生活しているのですが、最初からいくつかの活動エリアに分かれており、当園ではそれを遊びの「ゾーン」と呼んでいます。子どもが熱中して遊びだすと、スポーツでよく言われる「ゾーンに入る」というのと同じで、その世界に没頭しています。そんなふうに遊び込めるように、部屋を最初からゾーニングしているのです。

お泊まり会が終わった7月中旬、この3階のゾーンニングの見直しを開始しました。それぞれのゾーンでの遊び方をもっとよくするために、場所を入れ替えたり、広くしたり、子どもが歩いて行き来する動線を変えたりしました。どんな方針でそうしたかというと、静と動の活動のバランスをよりよくすること、絵本やごっこ遊び、のんびりリラックスする場所を明確にすること、それぞれのゾーンでの過ごし方が安定すること・・・などを念頭におきながら、あれこれと試してくれています。

職員のコロナ感染で長い期間、家庭保育や保育時間でご協力をいただき、やっと今日5日(金)から通常の保育に戻してて行きます。久しぶりに子ども同士も再会できて嬉しそうです。新しいゾーンでの過ごし方に慣れてきた頃に、お休みいただくことになってしまいましたが、今日からまた再スタート。どうぞよろしくお願いします。

家庭保育と保育時間のご協力に感謝

2022/08/04

保育時間の短縮と家庭での保育のお願いは、本日4日(木)をもって終了となります。本当に長い間ご不便をおかけしました。また多くの方にご協力いただき、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。ただ、引き続き療養されている園児や保護者の方もいらっしゃいます。みなさんと一緒に元通りの保育園生活に早く戻れることを願っています。なお、本日正午までに、新たに陽性となった園児はおりません。

(写真は今日の昼食)

保育体験のキャンセルや延期

2022/08/03

新型コロナウイルスの感染が流行ってしまうと、予定していた保育や行事も変更を余儀なくされます。特に普段一緒にいる子どもたちや職員とは異なる人たちとの接触が難しくなるので、保育園での保育体験やボランティア受け入れなどはキャンセルや中止、延期にならざるをえません。本来、本日3日から、東京都社会福祉協議会が主催している高校生の職場体験を受け入れる予定でしたが、このような状況になってリスケせざるを得なくなりました。

きっと楽しみにしていたはずの高校生の皆さんには、本当に心苦しく申し訳ない気持ちです。コロナ禍で失われた体験が人生の岐路になっていくかもしれないと思うと、どこかで再体験できるように計画したいと思います。

映画「こどもかいぎ」から生まれた応援団

2022/08/02

映画「こどもかいぎ」をみた子どもたちが、自分たちで会議の場を増やす活動を始めています。その様子が昨日1日、NHKで放送されました。ここで紹介されている子どもたちは、実際に企業にプレゼンに出かけたそうです。頼もしい限りです。

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