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園長の日記

自立の姿(その3)食事

2022/03/03

自立、という概念は、簡単にいうと「自分一人でできるようになる」という意味です。当園のクラスの名前は、この子どもの発達の姿を表しています。ちいさなちいさなちっち組、おおきくのびるぐんぐん組、のように、その年の特徴を表しているのですが、年長組は、なんでもしようすいすい組です。このように乳幼児の発達の特徴というのは、おおむね自立と言ってもよく、そのプロセスが表現されているようにも思えてきます。

この短期の連載で取り上げている「自立の姿」は、だいたい満3歳になる頃のことを想定しています。満3歳というのは、昔から三つ子の魂百までというように、その子どもらしさの本質がしっかりと輪郭を示してくる時期だからです。今日のテーマは食事の自立ですが、その姿はこんな感じです。

「自分の食べられる適量がわかってきて、食べこぼさずに食べ、自分でごちそうさま、ができる」

この中には、いただきます、まで待つことができ、食べ物を見て自分で好き嫌いや、食べられそうな量がわかり、食具を使って食べ物を上手に口に運び、咀嚼と嚥下がすっかり上手になっており、満腹感を覚えて、おしまいにできるということです。このように食べることの自立には、こんなにたくさんのことが含まれているのですが、ここに至るまでには、生まれてすぐの授乳のころから、徐々にいろんな力が身についてきて、こうなっていきます。

生まれてすぐの赤ちゃんは、教えてもらわなくても、お母さんのおっぱいを吸啜し、ごくごくと飲み続けます。どれくらい飲んだのか、お母さんもはっきりはわからないのですが、満足すると、プイと飲むのをやめます。まずこの頃から初めと終わりは自立しているのです。自分で満足するまで飲むという味への好みと量への判断がしっかりと行われています。このイメージを基本に据えると、おっぱいの代わりに哺乳瓶になり、乳から離れて食事へ移行する「離乳食」になり、そこから幼児食へと移行していきます。

この食べ物の中身については、ここでは触れませんが、摂食行動の自立について、ごくごく簡単に触れておくと、乳を飲むから食べる、つまり唇と歯と舌を上手に動かし、食べ物を口先から口腔内で部分的に移動させつつ、ごっくんと飲み込む嚥下まで、一連のなめらかな流れを習得していきます。上唇をスプーンに「アム」と挟むように下ろして、食べ物を下の歯の内側へ取り込むような動きになっているかどうか、私たちはスプーンでの食べさせ方も配慮しています。

食事への意欲を自立の姿に結びつけるには、いくつかのポイントがあります。それは入園見学の時にも説明していますが、目の前にある食べ物を食べたくて手が出やすい姿勢を作ってあげることです。肘がテーブルの角に当たらず抜けるように、椅子の高さを調整します。テーブルと口元の距離を、肘が抜けるように調整します。肘が直角になるようにします。そのためには、座る座面の高さを合わせ、それに従って膝が直角になり、足の裏が踵からペタンとつくように、足おきの高さを合わせます。

この姿勢には4つの直角があります。肘の角度、お腹と膝で作る角度、膝の角度、踵の角度のいずれもが90度になるようにしてあげるのです。すると姿勢が良く、手がフリーになって、手づかみ食べがしやすくなります。手づかみで食べることは大切な行為です。手で握り、摘み、自分の口に入れることができるようになるまでに、いっぱい、食べこぼします。口に入らずに、ほっぺたに擦りつけたり、床に落ちたりします。大抵、これを防ぐために、家庭では匙で口へ運んであげることが多いでしょう。保育園では、この手づかみ食べをします。

ずいぶん昔ですが、ドイツの食事風景を視察した時に、手づかみ食べをしている赤ちゃんが、食べ物をこぼしている様子を見せて、その園の園長先生は藤森統括園長に「これがこの子たちの大切な仕事です」と説明したそうです。日本でも厚生労働省は手づかみ食べを奨励しています。このような時期を経て、食具もうまく使えるようになっていき、2歳児クラスで、自分の食べるものを選び、自分で食べられる適量を知っていくことになります。

子どもの味への好悪は、哺乳類として持っている味覚への好みと、個人差としての好みを分けて考えてあげることが大事です。誰でも人間なら持っている味覚への好みは、遺伝で持っているものです。すぐにエネルギー源になる炭水化物系の甘いもの、タンパク質の素であるアミノ酸が含まれている旨味、体液も血液も必須ミネラルである体が欲する塩分を好む塩味、腐れているかもしれないと避けようとする酸味、毒があるかもしれないと避けようとする苦味。この甘塩酸苦と旨味は、先天的な味覚の反応なので、子どもが甘いものや旨味のあるものを好み、酸っぱいトマトや苦いピーマンや人参を嫌うのは当たり前だということです。

なんでも食べるようにしたいのなら、美味しい料理にすることです。子どもにとっての美味しさは、この甘塩酸苦と旨味をいかす味にすることです。先日、タイ料理が出ましたが、ちょっと酸っぱいスープは苦手でした。そして、美味しいと感じるのは、個性としての味覚の敏感さ、過敏さにも配慮が必要です。子どもによっては、ちょっとした質感や匂いが苦手であるということがあります。これらの個人差も受け止めてあげなら、自分で自分の好悪を知り、適量を食べられるようにしてあげると、自分でいただきます、とご馳走様ができるようになっていくのです。

よくかんで食べるようにさせたい時は、食べることに集中するといいのですが、よく噛むと味が変わる、美味しいと思える、そういう経験があると、「これはどんな味なんだろう」から「これ、美味しいんだよね」と期待になり、噛めば噛むほど美味しいという経験になるといいのですが、そのためには、ある程度の硬さが必要になります。現代の食事は、どちらかというと、なんでも柔らかいものが好まれるようになってきているので、給食では時々は意識して、硬いものを出すようにしています。

箸の持ち方、使い方、三角食べ、頬張ったままおしゃべりしない、などのマナーは、ごっこ遊びの中で、意識するようにしています。食べている時に、とやかくしつけを言うのは、食事が楽しくなくなるからです。別の機会にしっかりと教えて、できている時に褒める、それが何事にも応用できる基本になります。

自立の姿(その2)睡眠と食事

2022/03/02

生活の自立を考えるとき、よく眠って気力が回復した朝は、お腹が減るものです。夜更かしして寝る前に何かを食べたりすると、夜の睡眠中にも消化が行われていて、朝はなんだかお腹が重い感じがして、食欲も湧かない、という経験は誰にでもあることでしょう。

(お昼寝をしないで、瞑想タイムで体を休めている子どもたちも)

 

目覚めは脳も体も起きないといけないので、朝の食事をとらないと、午前中の活動がうまく始まりません。そこで生活リズムを整えるための最も大切な標語が「早寝早起き」で終わらずに「朝ごはん」がついていることになります。

日本では、子どもの夜の生活が楽しすぎて(?)寝る時間が遅れ気味になると、それが翌日にまで尾をひいてしまいがちです。日本の子ども向けのメディア文化は海外でも人気ですが、それが夜ふかしを助長さしているとしたら、看過できません。そうなってしまいがちな最も大きな要因は、テレビ、ゲーム、タブレット、スマホだと、言われています。

テレビ、ゲーム、タブレット、スマホとの付き合い方は、現代の子育てで、とても悩ましい問題になっています。乳幼児の時にテレビの視聴時間にケジメができないと、その後、小学校でゲーム、中学校でスマホの付き合い方がルーズになってしまいます。最初が肝心です。赤ちゃんの時から子育ての環境にテレビはない方がいいのですが(保育園でテレビを見ることはありません)、現実はそうもいきません。でも、知っておいてほしいのは、世界の小児科学会は2歳まではテレビは見せないというのが大切な常識になっていることです。

https://www.jpa-web.org/about/organization_chart/cm_committee.html

https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/media2008_poster02.pdf

夜の睡眠までの時間の使い方は、最大の秘訣は、早いうちからの習慣化、です。

帰宅して家でやりたい好きな遊びがあり、テレビをつけたとしても食事の時は消します。そしてお風呂(夕食とお風呂の順番はどっちでもいいのですが、日によって変えない変えない方がいい)の後、絵本でもなんでもいいので、だらだら寛ぐ時間を作って、眠る前のこの時間を大切にします。はい、もう寝なさい、と言って、はいはい、と眠れるものではないからです。そこで眠気を誘うためのポイントがいくつかあります。食事やお風呂が終わったら部屋のライトは暖色系で暗めにして、青や白は避けること。またお風呂で温まった体が覚めていく時に、人は眠くなりますから、そのチャンスを生かすのもいいです。一旦、うとうとさせてしまうと、また寝るのは難しくなりがちです。

永持さんの「赤ちゃんねんね講座」では、この流れを作るときに「逆算マネジメント」という発想を提案されています。布団に入るタイミングを8時とか8時半とかに決めておきます。本当に眠る時刻は、ずれることが多いので、布団やベッドに入るタイミングを決める方がいいでしょう。その時刻から、遡って7時半にお風呂、7時に夕食などと決めていきます。夕食を作る間だけ、うまくひとり遊びができるような工夫が必要ですが、この場合の秘訣は夕食を作る時間を、ウ〜ンと短くしてしまうことです。

夕食はお腹がいっぱいになればよし!と考えることです。保育園の食事は1日に必要は栄養とカロリーの半分以上になるように計算されています。朝ごはんと晩ごはんで半日分がとれれば大丈夫です。冷食や作り置き、電子レンジの上手な活用など、色々な手があります。

6時にお迎えだとして、8時に布団に入るとすると、2時間ですが、これが短いと感じるか長いと感じるか?ここがポイントです。2時間もある!と思えるようなルーティンを作り出せるといいですね。多くの方が夕食の準備と食事時間に多くを取られてしまっているようです。ここを短時間にすることが、睡眠から食事の自立を作り出すためのポイントになりそうです。そして、この時間を過ごすことが楽しい!という時間になることを優先することです。

だらだらタイムのコツがあります。それは親の方が他愛のない話をしてあげることです。子どもから保育園の話を聞き出そうとせずに、寝る前の時間は「今日ママね、買い物でいいもの見つけちゃった〜」ぐらいの、お話です。子どもになったつもりで、ポア〜ンとした時間にしましょう。イメージは「お猿さんの親子が毛繕いしているような、あのダラダラした感じ」(永持さん)です。どうぞ試してみてください。

自立の姿(その1)睡眠

2022/03/01

新年度まで残すところ1か月。今日から3月になって「移行保育」も遊びから食事、睡眠へと移ってきました。その報告がクラスブログでなされていますが、今日から少し「自立の姿」というものを、その子どもの姿からお伝えしようかと思います。私たちは子どもの姿を5つの領域で捉えることを「成長展」にちなんでお話ししてきましたが、自立という姿を捉えるときは、生活の領域で捉えるとわかりややすいと思います。子どもの生活が、どんなことで成り立っているかというと、大体は遊びの他に、食事、睡眠、排泄、衣服の着脱、清潔、身近なものの扱い、あいさつなどからなります。これを一つずつ取り上げてみましょう。まずは、睡眠から。

生活の自立がなぜ「睡眠」から始まるのかというと、実は起きて活動するための条件を整えている時間が、睡眠だからです。睡眠がしっかり取れていないと、実は生活が自立できなんです。ですから、基本的な生活習慣や、小学校以降の「自覚的な学び」のためにも、「早寝早起き朝ごはん」が欠かせない必須条件になっているんです。意識して何かができることの前提条件のようなものです。うまくエンジンがかかるためには、ガソリンが必要なように、モーターが動くには電気が必要なように、生活が自立していくためには、夜の睡眠の質とリズムがどうしても順調である必要があるのです。

そこで睡眠の自立、というのはどんな姿かというと、まずは「無意識にそうする」ようになること。言い換えると「習慣」になることです。体が覚えていて、黙っていても、自然の流れでそうしていくようになることです。これは睡眠に限らず、食事も、排泄も、衣服着衣も、顔を洗ったり、歯を磨くことも、ルーティンの流れに沿って、毎日同じように体に染み付いていくようになることがいいのです。そのためには、まず大人がそれぞれの「自立の姿」を知っておくことが、そこへ導くためにも大事なことになります。

睡眠の場合、どんな習慣になるといいのかというと「寝るタイミングになったら自分で布団へ行き、安心と満足の気持ちの中でぐっすり眠り、朝になったら気持ち良く目覚める」ということです。自分で布団に入って寝て、自分で気持ち良く目覚める。寝つくことも、目覚めることも「自分から」という流れを作ってあげることが、本人にとっても親にとっても、ストレスのない愉快な生活づくりに繋がります。自然のリズムの中で生活することは、生活が充実してくるものです。

そのような睡眠に導くコツはどこにあるのかというと、リズムづくりの起点(スタート)は、朝7時前には目覚めるように、カーテンを開けること。光を浴びることです。これで脳の中の体内時計Aが「リリリ〜ン」と目覚めます。それだけでは、まだ本当には目覚めません。次に全身の細胞の中にある体内時計Bも目覚めさせる必要があるのですが、それはどうやったら起きるかというと、食事をとることです。朝ごはんは、しっかり目覚めるためにも大切なのです。これによって、午前中の生活、戸外活動、遊びが充実してくることになります。それが16時間後に眠くなるタイミングを誘発してくれます。

ここで、お昼寝の自立ですが、「お昼寝は夜の睡眠のための準備運動」という言い方があって、お昼寝は夜の睡眠とは意味も役割も違います。大切なのは夜というタイミングにしっかり10〜11時間の連続した睡眠が取れることにあります。そうなるために、昼の午睡があるのです。午睡と夜の睡眠の時間を足して10時間あればいい、と考えると間違えます。午睡はこの10時間の中には含めてはいけません。役割が異なるのです。午睡は真っ暗にしないで、オルゴール音がするような環境で行います。

保育園では乳児の午睡では、お昼ご飯が済んで、お昼寝に入る前に、絵本や紙芝居を読んであげて、心をもみほぐします。寛いだ気分で、あくびでも出そうな雰囲気の中で、お昼寝に入る歌を歌ってから布団へ移動します。この歌が合図になって、ちっちさんも、ぐんぐんさんも「自分で」布団の方へ移動します。さあ、寝よう、などという言葉は聞いたことがありません。ルーティーンが決まっているので、自然に体が動きていく感じです。眠りにつくまでには、個人差がありますが、少しさすってあげたり、そばにいてあげたりして、眠りに誘います。

にこにこ組になると、この寝かしつけも無くしていきます。ちょっとそばにいてあげる程度で、自分から布団に入って寝るという自立が完成していくのです。基本的生活習慣の自立、は満3歳を目安にしています。移行保育が終盤を迎えているこの時期、1年前、半年前と同じではありません。「自分で」という部分が自動化して、体が覚えているという状態にしてあげていくのです。

成長展の感想、ありがとうございました

2022/02/28

成長展の感想、ありがとうございます。動画も楽しくご覧いただけたようで、嬉しいです。この動画は3月6日(日)まで見ることができます。子どもの育ちを実感するのは、毎日では気づきにくくても、一年ずつ比べてみると大きな変化に驚きます。2歳児クラスの保護者の方の感想の中には「昨年は成長の差が出ていたようですが、今年は個性でした。その子らさしらが固まってきていてカラフルな展示でした。・・・」というのがあって、まさしく「ああ、そうそう」という変化ですね。

0歳から3歳ぐらいまでは、発達の差というのは、どの子どもも通る発達の筋道に差がある感じなのですが、満3歳を超えて幼児になってくると、発達の差というのは個性の差になってきます。その子らしさが、いわば縦から横に広がってくる感じですね。この感想は、その辺りの変化を感じとっていただいたようですね。

子どもの発達というのは、一人ひとり全く異なるものなので、子育てを楽しくする秘訣の一つは、平均的な数値や何歳ならこうだろう、という標準値などに振り回されないことです。いつもいうのですが、平均的な子供というのは、世の中に一人もいません。一人ひとりがかけがえのない(つまり代わりのものがない)、唯一の個性を持ってこの世に生を受けています。そのあり方は、まさしく一人ずつ異なります。だからこそ、面白いし、楽しいはずです。できれば、そのひとりひとりの在り方自体が、色々は素晴らしさを見せてくれます。そこを称賛しながら、面白がりながら、子育てができるといいですね。

保育園では、いろんな先生たちがいて、先生によってもその子の可愛らしさ、愛おしさ、面白さ、愉快さなどを捉える視点が違っていたりして、それを語り合い、共有することは、とっても楽しいものです。ちょっとした仕草や格好、言葉、気持ちなどにそうしたことが発見されたりします。これからも、ちょっとしたことかもしれませんが、それを分かち合っていけたらと思います。

 

自分らしさを再確認してもらう成長展

2022/02/26

当園の成長展は、クイズ形式になっていて、「はて? これがうちの子だろう?」と、いろんなものを当ててもらうようになっています。手型はどれかな?足型は?身長は?体重は?と、自分のお子さんのことをどれくらい当てられるか、コーナーを回っていきながら、お子さんの成長のあれこれを理解してもらいます。一人ひとりの成長の記録が個別のファイルになっており、在園中の育ちが個別のポートフォリオのアルバムになっていく仕掛けです。

子どもの育ちは、日本では教育の5領域で捉えることになっています。健康、人間関係、環境、言葉、表現です。そこで成長展でもこの5つの視点でまとめてあります。例えば領域「健康」では、身体的な育ちを手形、足型、身長、体重の4種類です。

領域「人間関係」では、動画によって「コミュニケーション」をご覧いただき、展示ではクラスのお友達の名前を当ててもらいました。

領域「環境」は、子どもが好きな遊びの種類は、好きな公園を知っているかどうか。

そして領域「言葉」は、私たちが「シルエット」と呼んでいる影絵での物語作りの掲示物で、自分のお子さんの作品を選んでもらいます。

領域「表現」では、画用紙に描いた「ぬりえ」「人物画」「自由画」の3種類の子どもの作品です。この作品は、シルエットもそうですが、一年のうちで3回描いてもらい、その変化を辿ることもできます。

先生からのメッセージは、子ども一人ひとりの個性を文章でまとめてあります。私もやってみると、当たり前ですが大体当たりました。この子はどの子か、その子らしさが描かれています。

自由画や人物画、ぬりえにもその子の世界、興味関心のあるものなどが現れていて、ここでも「その子らしさ」が現れています。

この成長展は、クイズになっているので、自分の子どもの作品だけではなく、他のお子さんの作品も見ることになるので、「あ、これはきっと◯◯さんだね」などと、個性の幅広さを知ってもらう機会にもなります。

私たちの保育園は、どの子どもも、その子らしく生きていくこと、自分らしくいられることを最も大切にしています。

それは入園のための見学案内の時からお伝えしてきたことでもありますが、日々の生活でも、このような行事でも、そのことは変わりません。

他の人やものと比べて、良し悪しや優劣をつけるような世界とは無縁です。かけがえのない一人ひとりの存在が、そのままでいい、みんな違っていていい、という大きな肯定が、私たちの保育園の最大のメッセージです。

行事のたびに、とても凝った食事が出るのですが、その行事食の様子も、全て展示されました。好評だった食事のレシピも、紹介しました。

3月はわくわくした気持ちで過ごそう

2022/02/25

(園だより3月号 巻頭言より)

今年度も最後の1ヶ月となりました。新型コロナの第6波の最中で迎えることになった年度末。この1年を振り返ると、どうしても「コロナ禍」を無視するわけにはいかない年だった気がします。コロナ禍はいろんなところに影響を与えました。保護者の皆さんもご家庭や職場でも、苦労の絶えない状況が続いていたことと思います。今でもその状況はあまり変わりませんが、幸いなことに、これまで当園では子どもの陽性が1名に留まり、濃厚接触者もいないで、今日に至っています。これからも新しい変異株が登場して同じような対応が続くと思われますが、気持ちは明るく持って、楽しい生活を維持し守っていきたいと思います。

さて、3月は年長のすいすい組の卒園式があったり、お別れ遠足に行ったりします。コロナ禍の状況が許せば、4月の就学前に小学校や学童へ訪問したいと考えています。子どもは友達作りの名人です。すぐに仲良く遊び始めます。お友達のことは、あまり気にし過ぎない方がいいでしょう。それに加えて保育園では兄弟姉妹のように生活してきたので、小学校も学童も2年生によく知っているお兄さん、お姉さんが待っています。その話を小学校の先生とすると「それは安心ですね」と言われます。

一方、保育園での進級はすでにいろいろな形で移行を進めてきました。一つ上のクラスへ行って遊んだりしてきたので、たとえば、1階で過ごしているぐんぐん(1歳児)の子どもに「今日はにこにこさん(2歳児)で遊ぶよ〜」と声をかけると、さっとその気になって、やる気満々の姿を見せてくれます。にこにこさんも、3階のわいらんすいへ行って、いろんなゾーン遊びにはまっています。どれの遊びも新鮮なようで、正しい遊び方を学ぶと楽しい!という体験になるように気をつけています。本来、いい遊びというものは、一通りの遊びしかできない素材・資源ではなく、創意工夫によって、いろいろな遊びや活動になるものが「豊かな遊具である」というテーゼがあるのですが、当園のゾーンには絵本や運動、テーブルゲームのようにある程度、使い方や遊び方が限定されているものから、制作や積み木、ごっこのように、遊び方そのものにバリエーションが豊かなものがあります。

遊びの移行に始まって、食事の場所や配膳も次のクラスに慣れ、お昼寝も新しい場所で慣れるように進めていきます。遊び、食事、睡眠、と生活の3大要素を丁寧に移行しながら、それに慣れて4月を迎えるように進めていきます。4月に新しいお友達がやってきて仲良くなるには「こうやって遊ぶと楽しいんだよ」と教えてあげることで、新入園児ともスムーズな生活が始まります。担任も3月下旬に発表しますが、必ず知っている先生がいるようにします。小学校も進級するクラスも、子ども自身が楽しい生活を見通して期待し、わくわくした気持ちで4月が迎えられるように、整えていきたいと思います。

成長展の動画を見る前に見てほしい「ハムリンの実験」動画

2022/02/24

ロシアがウクライナに侵攻したニュースを見た後で、子どもたちの姿を思い浮かべると、大人が子どもたちよりも成長しているとは、とても思えません。大人は愚かなことを開き直ってやりますが、子どもは賢明なことを慎重にやっています。赤ちゃんは他者が喜ぶことを喜べる共感力をもって生まれてきます。誰に教えてもらうわけでもなく、生まれながらにして、他者を助けることを好むことが明らかになっているのですが、その事例としてよく引き合いに出される有名な実験が、動画で公開されているので見てみてください。ここには、坂道を登ろうする赤丸くんを、手伝うように見える青色の四角くんと、邪魔をするように見える黄色の三角くんが登場するのですが、それを見た赤ちゃんは、助けようとしている青色の四角くんを圧倒的に支持します。このような「利他性」をもって生まれてくるのがヒトの赤ちゃんです。このような素晴らしい倫理性を持っていると思って、園の子どもたちの動画(明日25日午後2時に公開)を見てもらえると、面白さが倍増することでしょう。

 

成長展でお伝えしたい子どもの育ちとは?

2022/02/23

(動画はIDパスワードが必要な「お知らせ」からどうぞ。2月26日から)

子どもの育ちを伝えたい。そういう趣旨の「成長展」が今週末の26日(土)に開かれます。日本の保育園や幼稚園は、子どもの育ちを5つの視点で捉えることになっています。それは、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5領域というものです。この話をすると、何か専門的な感じがして難しく思う方がいらっしゃるかもしれませんが、こう考えると、わかりやすいかもしれません。

私たちは人間です。人間とは?と解説したものはたくさんありますが、そこで共通なのは、ヒトは社会的存在だということです。お母さんのお腹の中にいた時から、母子の間でコミュニケーションをとっていて、そのやり取りは心理的にも身体的にも、重要なやりとりをしながら、初声をあげます。人間は人間に育てられないと育たない存在だということです。

ヒトは動物と共通なものを持っています。確かに動物にも家族があり社会があり集団を持っていますが、人間の社会の場合は、その「関係」の質が育ちそのものに大きな影響を与えるような関係だということが、動物とは異なります。アリストテレスの「人間は社会的(ポリス的)動物である」という有名な言葉がありますが、それです。

その集団の在り方が、子どもの成長にとってはとても大切だということは、言い方を変えると、人間関係が育ちに大きな影響をもつ、ということになります。そこで、今年の成長展は人間関係をテーマにしました。つまりコミュニケーションです。この人との間に心を通わせる、気持ちをやりとりする、その様子から育ちの姿を動画でご覧ください。

この人間関係の発達がどんな状況で行われるのか、と考えるために「環境」を捉えることが保育になります。この環境には大きく分けると自然環境と人工的環境があるのですが、人工的環境というのは、人間が作り出す物やことは全てこの環境のことです。ですから言葉も表現もここに含まれるのです。教育の5領域というのは、健康に人間関係が育つことなのですが、それを捉えるのは環境との関係で考えましょう、ということです。そして環境の中でも、人間だけが獲得した表象としての言葉と、言葉以外でも表すことができる表現に注目しましょう、ということになっているのです。

人間の心身の育ちは、健康であることは必須条件のようなものであり、人との関わりの中で育つ社会的存在ですから、子ども同士の中で使われる関わる力、言葉の力、表現の力を見ていくことにしましょう。関わる力は動画でじっくりご覧ください。そして言葉はシルエットを使った物語の想像力を通して、そしてぬりえ、自由画、人物画でどのように変化してきたかを感じとってみてください。

朝が1日のゴールデンタイム

2022/02/22

1日を一年に例えるなら朝は春。陽が昇って明るさを増していく時間。この時、目覚めた心とからだはもっとも新鮮な状態で世界と関わり始めます。今年度の睡眠講座は17回目を迎え、これに参加された方から、「とても参考になりました」という感想をたくさんいただきました。早速実践してみて、その手応えを感じたという親御さんの感想をお聞きすると、とても嬉しくなります。新しく入園された家族との共同保育が、生活リズムを整えていくことから始まっています。

睡眠講座に参加していると、毎回、感じることがあります。それは人生というものが、私たちがまだ知らない大きな営みの一部でしかないのだろうという予感です。それは自然との調和を示唆している感覚に近いものです。こうした方がいいよ、という直感ににて、どうして?と言われると医学的な科学的根拠を求められてしまうことが多いかもしれませんが、私はとらわれない意識で静かにその事実を感じ取ることができれば、人間も自然の中で生まれ育っていくものだということを素直に受け入れることができます。

例えば、誰にでも公平に与えられている24時間という時間でも、その営み方はいろいろです。その過ごし方にはより良いものあるのですが、より良いものになっていく基準は、私たちの心も体も、実は大いなる自然の営みとシンクロしているということから導かれます。知らず知らずのうちに、人が生み出した楽しく便利なものを享受しているうちに、どうも自然との調和から、ずれてしまうことが多くなってしまった気がします。

野菜を育てたり、椎茸の生長を観察したり、お月様の満ち欠けを眺めたり、雪が降り氷を触ったり、そして毎朝、起きてカーテンを開けるとき、地球や季節の中にいる私たちに気づきます。午前中に体を動かすと、1日が順調に始まる気がします。明日は休日ですが、青木さんが一緒にダンスを楽しむ時間を作ってくださいました。毎日の午前中の時間をゴールテンタイムに変えていきましょう。

 

すこし、白酒召されたか

2022/02/21

子どもたちは身近にある文字や数や記号に興味を持ち出すと、自分の世界に取り入れて、読んだり、数えたり、場合によっては書いたり、計算したりするようになります。絵本の読み聞かせの福田さんから手作りの「まり」を頂いたので、ひな壇に飾ったのですが、集まってきた子どもたちは「うれしいひなまつり」の歌を、もう覚えていて、合唱が始まりました。

でも途中で3番や4番の歌詞がわからなくなって、キンノビョウブニウツルヒヲ〜あたりからモニョモニョ〜スガタ〜みたいになっていたので、早速、模造紙を出して、マジックで歌詞を書いてあげました。

お世話大好きの年長のお姉様方が、ワンフレーズずつ歌い、それを私が文字にしていきます。ぜんぶひらがなで書いて見せたのですが、これは意識して行った保育です。手本を見せる。ひらがなが、このように生活に役立つものだ、という見本であり、文字の形の見本であり、書き順の見本であり、きっと私が意識していないことも、何かしら真似したいと思うような何かのモデルになったことでしょう。

歌のようにメロディやリズムに乗せて覚えてしまう歌詞は、意味がわからなくて覚えてしまいます。♪およめにいらしたねえさまに よくにたかんじょのしろいかお 官女という意味は知らないはずですが、気にせずに歌っています。♪〜す〜こし しろざけ めされたか のところは、知らない言葉だったようで、「め・さ・れ・た・か」と一字ずつ、確かめていました。

お酒を飲んだということはわかっているのですが、「召す」で来る、着る、食べる、飲むなどの意味で使われるのですが、それに「〜れる」のついた敬語(尊敬語)だということは、小学校5年生まで待つ必要があるのですが、耳に馴染んでおくといいですよね。しかもその疑問形。「少し白酒をお飲みになったのでしょうか、ほっと赤いお顔になられた右大臣様です」

ちなみに、右大臣はこちらからみて左手です。この右左に「どうして?」と聞いてくる子はまだいません。これは、STEM保育のM(数学)の面対象(幾何学)の話になるのですが、誰か「あれ?」と気づかないかなあと、待ち遠しいですが。もしかすると、積み木博士たちなら、その違いはとっくに理解している可能性はありますが。

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