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STEM保育・自然科学

学びに向かう力

2021/11/19

大谷翔平が満票でMVPを取ったニュースで始まった今日19日は、ほぼ皆既に近い月蝕で終わった1日でした。

大谷選手は野球界の歴史を作っただけではなく、全てのアスリートの中でも、一際光るものがあります。それは「学びに向かう力、人間性」が素晴らしいのです。下の図は岩手、花巻東高校野球部に入部した時、1年目の冬に大谷選手が作った目標設定シートです。

今季の成績は最低限であって、もっと上を目指している「オオタニサン」は、周囲の人に感謝を忘れず、その人柄も愛されています。

「学びに向かう力」とは、非認知的能力のことなのですが、投手としても打者としても、その「知識・技能」に対して記者30人が全員、ショヘイの名前を選びました。そのスキルに磨きをかけたものは、そのエンジンになった「学びに向かう力」だったに違いありません。

野球というスポーツは、瞬時の思考力や判断力を必要とし、それを華麗なプレイで見るものを魅了する表現力が求められている職業です。これら「思考力・判断力・表現力」は、認知的能力の中でも、「知識・技能」を実際に働かせていくものであり、コンピュータならメモリに対するCPUのような役割に相当します。

今のべた3つの力は、まとめて「資質・能力」という言葉で、平成28年度の「中央教育審議会」答申に位置づいている「生きる力」です。この「資質・能力」は、乳幼児にも当てはめられ、翌年に告示された「指針」や「要領」でも同じ言葉が使われています。ただし「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」には「の基礎」という言葉がついています。このような説明を、今日はある大学の保育士養成課程を履修している学生たちにリモートで説明しました。

「学びに向かう力」は、非認知的能力なのですが、実はその前に次のような修飾語がついているのです。「心情・意欲・態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする」学びに向かう力、なのです。

赤ちゃんの頃から、これらの3つの力が働いていることを見ることができます。一人一人の持っている力がどのように働いているのかを見極めながら、子供たちの成長を見つめていきたいと思います。

第1回乳幼児STEM保育研修会

2021/11/15

次の「分数の足し算」について、皆さんはどう考えますか。問題は「2分の1」たす「3分の1」です。小学生は分母と分子を足して「5分の2」と答えることがあります。2打数1安打と、3打数1安打だった選手は5打数2安打だから、というのです。一瞬、騙されませんか? 面白いでしょ。分数の足し算という概念を理解することは、実は結構、難しいんです。大人「通分」という記号操作を覚えていてるだけで、分数同士を「たす」というのは、本来、どういう意味なのか、わかっていないような気がします。実は「たす」には多様な意味があるのであって、ある限定的な意味になっていることを理解していません。

こんなエピソード満載の講演が昨日15日(月)に東京・三軒茶屋の昭和女子大学でありました。講師は秋山仁・東京理科大学数学教育センター長です。15日(月)の、第1回乳幼児STEM保育研修会でのことです。開催したのは、藤森先生がこのほど立ち上げた一般社団法人幼児STEM保育研究会(藤森平司理事長)です。藤森先生もこんな事例を紹介しました。小学校教員時代の話です。「倉庫の四隅にわらの山があります。一つの山、2つの山、3つの山、4つの山があります。わらを全部たすといくつの山になるでしょう?」答えは、10の山と答えがちですが、正解は「一山になる」です。これはトンチクイズみたいですが、「たす」という言葉の意味がいかに多義的かということでもあります。

分数同士をたすことは、あくまでも「量」を足しているので、小数どうしの足し算で表せば、勘違いはおきません。0.50+0.33=0.83だと答えるでしょう。ところが「2分の1」たす「3分の1」となると、「割合どうしを足すこと」という意味が生じ、割合の平均を求めることを「たす」ことと混同してしまうのです。野球の打率を出しているのは、母数と子数どうしをたすと平均を求めることになりますよね。

小学生はこの二つの違いを理解することが難しくて、丸い図を書いて「量の足し算」であることを理解します。あるいは「通分」という方法で、正解が導かれるということに「慣れていく」ことになります。ここの違いが、数学が暗記にすり替わる分かれ道になります。この別れ道は、数学だけではなく、科学、技術、エンジニアリングにも見られるのでしょう。秋山さんは「暗記でできることは、数学の本質と関係がない」と言います。

ここまでは小学生以上の話ですが、では乳幼児にとってのSTEM保育のポイントは、なんでしょうか。面白かったのは、秋山さんも私たちの結論と同じだったことです。いわゆる非認知的能力の方で、心動かされる体験や、意欲や好奇心・探究心、思いやりや協調性、諦めない力や最後までやり遂げる力などです。これらの力はスキルなので、教育によって育つもの、身につけることができるものです。ではどうやって、育つかというと、その方法も私たちと同じ考えでした。暖かい愛情や大人の応答性、没頭して遊び込んだり子ども同士の関わりの中で育つのです。この心情・意欲・態度が育つことで、STEMマインドも身につくという構造は、全く同じ話でした。

秋山さんの話の後、午後は河村康文・東京理科大学教授と藤森理事長との対談でした。藤森先生からは数学の面白さを小学生にどう伝えたかという実践事例、川村先生からは理科や科学の歴史についも話があり「科学というのは発見と発明の歴史です」という指摘に、テクノロジーやエンジニアリングの側面が理解できました。

加湿と空気清浄の機能を強化へ/今日の「月夜は?」を掲示

2021/11/05

空気清浄機の機能を兼ね備えた「加湿器」を今日、全ての保育室に設置しました。

(1階 ちっち・ぐんぐん)

明後日7日には「立冬」だというのに、幸にして10月のような20度前後の暖かい日が続いています。これからは一雨ごとに寒くなっていくでしょうが、それに併せて空気も乾燥してきます。コロナ対策を考えても窓を開けた換気がしにくくなるので、空気清浄の機能を強化しました。

(2階 にこにこ)

(3階 中央)

(3階 寝室)

話は変わって、今日は月の年齢は「0.3」で新月です。今日から毎日、月が少しずつ上弦の月になっていきます。その月の写真を、1階から2階への階段の袖に毎日掲示していくことにしました。「今日のお月様は、どんな形かな?」と、親子の会話を楽しんでください。

満月から下弦の月へ向かう月には、日本らしい名前がついているのですが、その風情も楽しんでもらえたら、とも思っています。

またチャンスがあれば15日ごろから望遠鏡で上弦の月を観察できたらと思います。

 

業平小の運動会で青木さんがダンス指導

2021/10/30

東京スカイツリーのすぐそば、墨田区立業平小学校で10月30日に開かれた運動会を見てきました。6年生の3クラスとさくら学級86人による出し物が、ダンサーの青木尚哉さんが指導したダンスだったからです。

演目は「虹色の風を起こせ」。内容は一人で歩くこと、数人が並んで歩くこと、漢字一文字のイメージを数人のグループで表現すること、そして、千代田せいがでもやった「マネキン」などのワークで構成されていました。運動会は校庭で行われたのですが、真っ青な秋空に揺れていたのは6年生が作った傘の作品でした。

ある枠があっても、その中の動き方を自由に作り出すと言う創造性に主眼が置かれていることがわかります。例えば6人が横1列に並んで歩くワークでは、スタートとゴールは並んでいるのですが、途中では誰かが速く走ったり、止まったり、ゆっくり歩いたり、ランダムに動く模様ができます。それをお互いに見ないでゴールを一致させるというものでした。タイミングやスピードを自分たちで考える面白さがあります。

作品のパンフレットによると「まずは動きのアイディアをできるだけ出し合って、そこからより見せたい動きや、場所の使い方、他のグループとのつなぎ方も考え、工夫を重ねてきました」。これを授業で作り上げるまでに、7月に1回、9月に2回、そして10月に8回のワークショップを重ねてきたそうです。

学校とアーティストの橋渡し役を担っているのは、NPO「芸術家と子どもたち」で、「パフォーマンスキッズ・トーキョー」(PKT)という活動を平成20年度から展開しています。その代表の堤康彦さんによると、ダンスや演劇音楽などプロのアーティストを学校や児童福祉施設等に10日間派遣しワークショップを行い、子どもたちが主役のオリジナルの舞台作品をつくります。令和2年度までに都内小、中、特別支援学校156校、文化施設65カ所、児童養護施設33カ所などで実施、約9400人の子どもたちがアーティストとの素敵な出会いを体験しています。千代田区では昌平小学校がダンスで浅井信好さんとのコラボレーションしています。

小さいうちに、芸術家やアーティストと出会う体験は深いところで興味や関心を刺激します。乳幼児の体験の中にアートとサイエンスを、増やしていきたいものです。

 

学びの秋 その2

2021/10/09

先日7日の園内研修に続き、今日9日は藤森統括園長を囲んで、STEM保育について学びました。

10年後というのは2030年のことを指すのですが、それまでに急いで取り組む必要のある「地球温暖化防止」や「格差是正」に失敗すると、今の子どもたちが大きなツケを払わされる世界になってしまうことを意味します。従って、まずは大人が、政治が「正しい選択」をする必要があります。しかし、その実行が、なかなか難しい。

それでも一昨日7日(木)午後10時41分の地震のように(他にも、実際に起きた10年前の東日本大震災や、2050年までに70%の確率で起きると言われている「首都直下型地震」のように)、世界を揺るがすような大きな変化が待ち受けていて(変動性=Volatility)、それがいつくるのか不確実で(不確実性=Uncertainty)、それは単純なものではなく(複雑性Complexity)、合意を得ることが難しいような曖昧さ(Anbiguity)が付き纏います。こんな世界の特徴をVUCA(ブーカ)というのは9月1日に述べました。

今日の勉強会は、この話が大前提になります。そんな時代にはならないよ、と考えるなら、以下の話はいりません。でも残念ながら現実の世界はそんな時代になるのです。そんなに遠くの話ではありません。園児たちが中学生や高校生になる頃の話です。私の実感では、それはあっという間に来ます。そうした世界が待っていることが確実な中で、どんな力をつけておく必要があるのか?ということを考えました。

藤森先生の話は、まずなぜ、OECDが「2030年に向けた教育プラン」を打ち出したのか?ということから始まりました。きっかけは、日本の東日本大震災の教訓です。その一つが「釜石の奇跡」です。

消防庁のホームページによると「岩手県の釜石市では、約1,300人もの人が亡くなったり行方がわからなくなったりしました。大槌湾に面した鵜住居地区も、津波で壊滅状態となりました。しかし、この地区の鵜住居小学校と釜石東中学校にいた児童・生徒約570人は、全員無事に避難することができました。これは「釜石の奇跡」とよばれています。」として、音声読み上げ機能もつけて、詳しく説明されています。

https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat1/cat/post-12.html

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では、児童・生徒は、どのようにして無事に避難することができたのでしょうか。

(1)鵜住居小学校では、地震直後、まず校舎の3階に児童が集まりました。ところが、3階に集まり始めたころ、
(2)隣の釜石東中学校では生徒が校庭に駆け出していました。
(3)これを見た小学校の児童は、日ごろから釜石東中学校と行っていた合同訓練を思い出し、自らの判断で校庭に駆け出しました。その後、児童・生徒は約500m先の高台にあるグループホーム「ございしょの里」まで避難しましたが、建物の裏の崖が崩れるのを見た生徒が教師にもっと高いところに避難しようと伝え、
(4)さらに高台の介護福祉施設「やまざき機能訓練デイサービスセンター」まで避難しました。
(5)このあと、津波が堤防を越えたという消防団員や地域の人の声に反応し、子どもたちはさらに高台の石材店までかけのぼりました。
(6)このあと学校やまちは津波にのまれてしまいましたが、児童・生徒は全員、無事に避難することができました。

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なぜ、こんなことができたのでしょうか。

どんな力の差が、子どもたちの生死を分けたのでしょうか。

どんな防災教育が功を奏したのでしょう。

ホームページには、大きな文字で以下のようにまとめてあります。

さらに、その三原則とはこの3つです。

この教訓を、ブーカの世界に立ち向かうための教育に取り入れたのが、OECDの「ラーニングフレーム2030」だと、いわれているそうです。ちょうど7日の園内研修で取り上げたものです。ただし、このモデルは、教員が主導して行う教育モデルに近いので、子ども主体の学びに転換させる必要があります。

その参考になるのは、シンガポールの教育改革です。さらにこれを突き詰めていくと、STEM保育の必要性につながっていくのです。その内容は別の機会に触れるかもしれませんが、今日は、そのポイントを整理しました。

藤森先生は来月、北京で幼児のアクティブ・ラーニングについて講演します。藤森先生に講演を依頼したのは、佐藤学先生と秋田喜代美先生です。

保育において、想定や思い込みにとらわれず、現状に甘んじないで、各自が当事者として率先して行動できるかどうか?

子どもにはクリティカルシンキングが必要なこと、見通しを持って最善を尽くそうとすること、自ら考えて実行する力を持つこと。こんなことができるように、さて、乳幼児からの保育は何をどうしたらいいのか。

今日の勉強会で、絞り込んでいって最後に残ったキーワードは、真鍋淑郎さんと同じ「好奇心」でした。

 

 

ハエトリグサをめぐる学びの事例を考える

2021/09/02

話は昨日の続きです。これからの小学校以降の学びは「個別最適な学び」と「協働的な学び」が組み合わさった学習が期待されています。それを考えるための事例として、わいらんすいのブログに紹介されている「ハエトリグサ」をめぐる子ども二人の「知らせ合う姿」を考えてみましょう。

この図は、昨日お伝えした子どもの図の左側です。

左の「3段重ね」の一番上は「知識」、2段目は「スキル」、3段目は「態度と価値」となっています。

これが混ざり合って(より合わさって、ねじり合わさりながら)「コンピテンシー」が形成されていくことを表しています。コンピテンシーとは、ほぼ「能力」「力」のことです。

ここで注目してもらいたいのは、「態度」には個人的な態度の他に、協力的な態度が含まれていることでしょう。実物の「ハエトリグサ」、図鑑、それに詳しい友達、気心の知れた仲間、そして先生の存在。これらが「より合わさって、ねりじ合わさりながら」興味の対象が広がったり、調べる方法の知識やスキルを深めたりしているようです。

また「え〜っと」と考える姿も見られますが、子どもは何かに気づいたり、感じたりしたとき、大人のように頭の中だけで考えることはできません。手で触ったり、動かしたり、「ああかな、こうかな」を試します。試行錯誤です。小さいうちは「探索活動」というと、わかってもらえるでしょうか。

これはとても強い衝動で、これを押し留めようとすると、子どもから強い抵抗にあうことでしょう。子どもの興味や関心の最初の表れは、何かに気づいたとき、試行錯誤が引き起こされるのです。手足を使って「試すこと」と「考える」ことが混ざり合っています。

現行の保育所保育指針では、少し要約すると、知識は「豊かな体験を通じて、気づいたり」であり、思考力は「気づいたことを使い、考えたり、試したり、工夫したり」することだと説明されています。

この姿と子ども同士のやりとりも重なることで、子どもたちの姿は複雑に見えるのですが、さらに難しくさせるのは、子ども同士の関係のスキル(我慢したり、譲り合ったり、順番を待てたり、言葉で伝え合ったり・・)もそこで育ちます。

ちなみに、このような姿を捉えて遊びを発展させていくためには、一人の先生が2〜3人ぐらいの少人数の子どもを相手に、じっくりと見守ったり発展させたりする人的環境がどうしても必要です。

特にいざこざを通じて社会的スキルを育てる機会までその場に持ち込むと、学びの場は混乱してしまいます。社会的スキルが未熟な状態の何人もの子どもたちの中に、風船を投げ渡して自由にさせると、みんなが我先に「試行錯誤」を始めてしまい、ただパン!と割れて終わってしまうでしょう。

そのような子ども集団の理解に伴う学びの保障は、経験豊かな保育士がいなければ難しいということになります。単純に子どもの主体性を尊重するからといって、ただ興味をひく教材を与えるだけでは、混乱を生んで熱中できる遊び(つまり学び)にならないこともあります。子どもの状態と教材の間で起きることを見通しながら、子どもの環境(教材)の再構成は作られていく必要があるのです。

ハエトリグサをめぐる二人の学びは、そうした条件を満たしていたのかもしれません。

 

咲いた朝顔の花

2021/08/12

子どもたちが種から育てた「朝顔」が玄関で咲きました。

先生に抱っこしてもらって、花の中を覗き込むと・・・

「オシベみたいなのが、4つあった」「キラキラしてた」

すいすい(年長)ともなると、雄蕊って言葉を知っているんですね。

ほんとに綺麗でした。

春に植えた稲も穂が実っています。

玄関周りの緑には、すいすいの子たちが、毎日のように水やりを続けてきました。

 

お手伝いが大好きなすいすい組のお世話のおかげで、さいた朝顔。

いろいろなことを伝え合い、話し合う姿が頼もしいすいすい組の子どもたち。

最近のすいすいさんの成長ぶりを表しているかのようです。

不思議なハンターがやってきた!

2021/08/10

年長のNKくんが上野の国立科学博物館で開催中の「特別展 植物ー地球を支える仲間たち」で見つけたらしく、ハエトリグサを持ってきてくれました。

パカっと開いた歯のある葉が、中に虫が入ると、一瞬のうちに閉じて捕まえるという、植物ハンターです。こういうの、子どもにはタマリマセン。私も小さい頃、アリを中に落として、閉まるかどうかやったことがありますが、あれ、なかなか閉まらないんです。

調べてみると、葉の口の中には、感覚毛が生えていて、2回ないしは2箇所以上触れないと閉まらないようになっているらしい。雨の雫や枯葉など、生き物ではないもの、消化でいないものが偶然入っても閉まらないようにできていると言うから、面白い。植物が虫を食べるという、動物が草を食べるなら分かるけど、草木が昆虫を食べちゃうんだから、それだけでも不思議な生態ですよね。北アメリカで発生したのは6500万年前となっているので、ユカタン半島に巨大隕石が落下して、恐竜が絶滅した頃になります。ちゃんと花も咲き、種もつけます。

カブトムシを手に乗せて

2021/07/02

6月下旬に土から出てきたカブトムシですが、わいらんすい(3〜5歳)の観察技術が向上しています。「手についている汚れがついちゃダメだから、手袋してからだよ」とか「引っ張ると痛いから棒に乗せてあげるんだよ」などと、教えてくれます。どの子も触りたくてしょうがないようで、手のひらに乗せて「ほら、見て」と嬉しそうです。

雄のツノの部分を摘んで、持っているときは自慢気です。じっとしていたり、のそのそ動き出したり、カブトムシの動きをじっと見つめながら、その感触を確かめています。棒の端まで来て、少し羽を広げようとすると、「あ、飛んじゃう」「逃げちゃうよ」「大丈夫だよ」「ダメだよ、飛んじゃう、飛んじゃう」「大丈夫だって、こっちに入れて」と、興奮する時もあるのですが、それもカブトムシへの愛着からでしょう。

こうして子どもたちは、カブトムシについて詳しくなっていきます。からだの表面に生毛のようなものがうっすらと生えていることや、足にトゲトゲがあって、それで「痛い」ってなることや、しがみついている時に無理にとろうとすると、引っかかって取れないこととか、色々なことを感じたり、気づいたり、試したりしています。棒から手にうつそうとしているのですが、なかなか思うようにいきません。上に登っていくので、棒の先に棒を継ぎ足してうつさせることに気づいている子もいました。知識を使って工夫しています。その過程で思考力が育まれているのです。

優しく手に乗せて、じっとしているカブトムシをまるでペットでも飼っているかのように、うっとりしている女子もいます。虫をとりたい、観たい、育てたい、触りたい、という関わりから、愛でたい、育てたい、大切にしたい・・と子どもたちの心も成長しているのですね。どうやったらいいのか、自分軸からカブトムシ軸へと関わり方が変化しています。よりよい生活を営もうとする学びに向かう力や人間性の育ちがみられます。こんな「生き物」との触れ合いを通して、いたわったり、大切にしたりする気持ちも育っているようです。

 

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